分析哲学者は現象学を語れない

分析哲学と現象学と形式概念分析に関するブログ

完備束(complete lattice)

定義(完備束)
L = <L,∨,∧>の任意の無限部分集合に対して、その結びと交わりが存在するとき、L は完備束(complete lattice)と呼ばれる。また、L の任意の”可算”無限部分集合に対して結びと交わりが存在するとき、L はσ完備束(σ-complete lattice)と呼ばれる。
明らかに、完備束は必ず1と0を持っている。
定義(条件付き完備束)
束<L,∨,∧>について、任意の無限集合に対して、その結びと交わりが存在するものの、1と0を持たないものを条件付き完備束(conditionally-complete lattice)と呼ぶ。具体的には実数体 R 上の束<R,min,max>は条件付き完備束である。

束(lattice)

定義(上界、下界)
半順序集合 <P,⊑> の部分集合 S と P の元aについて、
∀x∈S(x ⊑ a)
であるとき、a は S の上界(upper bound)という。同様に、
∀x∈S(a ⊑ x)
であるとき、a は S の下界(lower bound)という。
定義(最小上界、最大下界、結び、交わり)
半順序集合 <P,⊑> の任意の2元からなる部分集合 {a, b} ⊆ P に対して、最小上界、最大下界をそれぞれ a∧b、a∨b で表し、a と b の結び(join)、交わり(meet)と呼ぶ。
定義(束)
半順序集合 <P,⊑> の任意の2元に対して {a, b} の最小上界(least upper bound; l.u.b.)、最大下界(greatest lower bound; g.l.b.)が存在するとき、P を束(lattice)と呼ぶ。代数構造を明示する場合は特に <P,∧,∨> と表すこととする。

束 <P,∧, ∨> においては、明らかに次の3法則が成り立つ。

  • (可換律; commutative law)a∨b = b∨a, a∧b = b∧a,
  • (結合律; associative law)a∨(b∨c) = (a∨b)∨c, a∧(b∧c) = (a∧b)∧c,
  • (吸収律; absorption law)a∨(a∧b) = a, a∧(a∨b) = a.
定理(結び、交わりと半順序関係の同値性)
集合 L について、上の3法則を満たす演算 ∨, ∧ が与えられているとき、a∨b = b と a∧b = a とは同値であり、このとき2項関係 R を
R = {(x,y) ∈ L×L | x∨y = y}
と定義するとき、<L, R> は半順序集合となる。

(証明)
a∨b = a が反射律、反対称律、推移律を満たすことを示せばよい。

  • 反射律 a∨a = a∨(a∧(a∨b)) = a 従って aRa,
  • 反対称律 a∨b = b かつ b∨a = a ならば、b = a∨b = b∨a = a したがって、b = a,
  • 推移律 a∨b = b かつ b∨c = c ならば、a∨c = a∨(b∨c) = (a∨b)∨c = b∨c = c したがって、aRc.

以上より、<L,R>は半順序集合である。

半順序集合(poset)

定義(2項関係)
集合 A 上の2項関係Rとは、Aの直積集合 A^2 = A \times A の部分集合
R \subseteq A\times A
を言う。(x,y) \in R をxRyとも書く。
定義(半順序集合)
集合P上の半順序関係(partial order relation)とは、P上の2項関係 \sqsubseteq であって以下を満たすものを言う。
  • (反射律) a \sqsubseteq a
  • (反対称律) a \sqsubseteq b かつ  b \sqsubseteq a ならば  a = b
  • (推移律) a \sqsubseteq b かつ  b \sqsubseteq c ならば  a \sqsubseteq c

半順序関係を備えた集合Pを半順序集合(partially ordered set, poset, ポセット)という。半順序集合 P を半順序関係を明示する形でとも書くことがある。

(半順序集合に関する各種用語)

  •  x \sqsubseteq y かつ  x \neq y のとき、 x \sqsubset y
  • 2つの元  x,y \in Pが比較可能であるとは、 x \sqsubseteq y または  y \sqsubseteq xが成り立つことをいう。比較可能でないときは、比較不能という。
  • 全順序集合(totally ordered set)とは、任意の2元が比較可能である半順序集合を言う。
  • 半順序集合 の最大元とは、任意の元 y に対して、 y \sqsubseteq x となる元 x を言い、通常1で表す。
  • 半順序集合 の最小元とは、任意の元 y に対して、 x \sqsubseteq y となる元 x を言い、通常0で表す。
  • 半順序集合 の極大元とは、 x \sqsubseteq y となる y が存在しないような元 x を言う。
  • 半順序集合 の極小元とは、 y \sqsubseteq x となる y が存在しないような元 x を言う。

最大/最小/極大/極小元は,一般に存在するとは限らない

定義(区間
半順序集合の任意の部分集合は同じ半順序関係によってまた1つの半順序集合と考えられる。半順序集合において、a ⊑ b であるとき、部分集合 { x ∈ P | a ⊑ x ⊑ b } は最大元 b と最小元 a をもつ半順序集合である。これを区間(interval)といい、[a,b]で表す。
定義(鎖)
半順序集合 の鎖(chain)とは、部分集合 C であって、その任意の2元が比較可能なものを言う。すなわち、鎖は全順序集合である。|C| - 1 を鎖の長さという。
定義(半順序集合のイデアル、フィルタ)
半順序集合イデアルとは、部分集合 I で x ⊑ y ∈ P ならば x ∈ P となるものを言う。ある元 x に対して y ⊑ x となる y 全体はイデアルとなるがこれを x の主イデアルという。半順序集合のフィルタとは、部分集合 F で x ∈ F で x ⊑ y ならば y ∈ P となるものを言う。ある元 x に対して x ⊑ y となる y 全体はフィルタとなるが、これを x の主フィルタという。

参考:数理情報学のための束論

マルティン=レーフのモチベーションの一つがわかってきた。

解析学におけるεーδ論法を完成させたカール・ワイエルシュトラスの助手は現象学の大家エトムント・フッサールだ。

しかも、ワイエルシュトラスの同僚はブラウワー以前の直観主義者、クロネッカー直観主義レオポルト・クロネッカーだ。

ε-δ論法における真偽判断は、現象学における志向性を持つ『判断』(judgement)相当のものを前提にして開発していると考えるのが自然。

おそらくマルティン=レーフはマルティン=レーフ・ランダムネスを定義する際にワイエルシュトラスボルツァーノにまで立ち戻った。そして、ブレンターノ、フッサールと意外と距離が近いということに気づいたのだろうと思う。そう考えるとなんだか道が見えてくるような気がする。

圏論よりも束論

圏論ブームなるものが一時期あった。自分も浮かれて乗っていたけれどひどい黒歴史だ。

圏論ブームは去ったのでしょうか? - Quora

結論としてわかったことは圏論を直接やっても意味がないということだった。

束論で圏論とほぼ同じことができるということはわかっているので束論をやろう

Books on Lattice Theory (titech.ac.jp)

AIは言葉をどうとらえているのか。

現象学と汎用AIに意識を持たせる研究はほとんど同じ話だと理解している。AI研究者による言葉の理解について語られていたので備忘録的に記録。

犬のイメージは絵だけれど、抽象的な「動物」になると絵ではなくてなにか変数の束縛構造になるはずだ、という話がおもしろい。

 

www.youtube.com

 

AIの意識の研究というのはそのまま現象学であるので、現象学はAIの意識問題を通して工学的に重要な位置に占めてくる、とかなるといいなぁ。

ペール・マルティン=レーフとその哲学

スウェーデンの論理学者・哲学者・数理統計学者のペール・マルティン=レーフという人がいる。

ペール・マルティン=レーフ - Wikipedia

業績としては、

- マルティン=レーフ・ランダムネス

- 直観主義型理論

などがよく知られているが、特に哲学に傾倒しているそうで、その哲学的知見は哲学の世界でも重要視されているらしい(よく知らない)。

特に「判断」(judgement)という概念にすごいこだわりのある人で、業績としてもこの判断概念を復活(?)させたことが一番だと思っているように見受けられる。

 

Per Martin Löf: How did 'judgement' come to be a term of logic ? - YouTube

 

自分は、この人の哲学がすごい興味深い。なんだかよくわからないが面白い。このブログは、このペール・マルティン=レーフの哲学の何がどう面白いのかということを、めちゃくちゃゆっくりと、自分に説明するように解説していこうと思います。

言いたいことは決まっているのだけれども、証拠をほとんど押さえていないので、これからじっくり調べていこうと思います。